なぜ円高で米国株の評価額が下がるの?
まず、なぜ円高になると米国株の資産が(円で見ると)減ってしまうのか、その仕組みを簡単に理解しましょう。
この現象を「為替差損(かわせさそん)」と呼びます。
これを具体的に見てみましょう。
仮にあなたが100万円分の米国株を、1ドル=150円の時に購入したとします。
この100万円は、ドルに換算すると約6,667ドルです。
その後、為替が円高に動いて1ドル=120円になったとします。
米国株の価値が6,667ドルのままでも、これを円に戻すと…
6,667ドル × 120円/ドル = 約80万円
となり、なんと20万円も資産が目減りしてしまうのです。
下の新しいグラフは、当初の資産からどれだけ価値が失われたかを視覚的に表現しています。
為替レートによる資産価値の変化
円安の時に新NISAを始めた方ほど、この「評価額の目減り」の影響を大きく感じる可能性があります。
しかし、これは米国株の価値が下がったわけではなく、あくまで日本円に換算した時の数字上の変化です。
この仕組みを理解することが、円高局面で冷静さを保つための第一歩となります。
今すぐやるべき!円高への3つの防衛策
この為替変動リスクから大切な資産を守るために、凡人会社員が今すぐ実践できる具体的な3つの防衛策を紹介します。
あなたの投資スタイルや考え方に合わせて、最適なものを見つけてください。
防衛策①:「為替ヘッジあり」投信でリスクを回避する
為替のブレを直接的に抑えたい場合に有効なのが「為替ヘッジ」です。
これは為替変動をキャンセルする保険のようなものですが、メリットとデメリットを理解することが重要です。
メリット | デメリット | |
---|---|---|
為替ヘッジあり | 円高でも資産が目減りしにくい | ヘッジコストがかかる 円安の利益を得られない |
短期的な資産の目減りを避け、精神的な安定を重視したい人におすすめの選択肢です。
防衛策②:「日本株」を組み入れて資産を分散させる
海外資産(ドル建て)だけでなく、国内資産(円建て)である「日本株」を組み合わせることは、円高に対する非常に有効なリスク分散になります。
特に円高の恩恵を受けやすいとされるのは、下記のような内需型・輸入型の企業です。
- 電力・ガス(燃料の輸入コストが下がる)
- 食品(海外からの原材料輸入コストが下がる)
- 鉄道・空運(海外からの旅行者が増える)
防衛策③:何もしない!積立投資を淡々と継続する
実は、多くの長期投資家にとって最も有効で再現性の高い円高対策は、「何もしないで、これまで通り積立投資を続けること」です。
円高の局面は、見方を変えれば「海外資産のバーゲンセール」です。
同じ1万円でも、円高の時の方がより多くの米国株を安く仕込める絶好の機会と捉えられます。
狼狽売りせず、淡々と買い続ける「ドルコスト平均法」こそが、将来の大きなリターンに繋がる最強の戦略なのです。
【図解】ヘッジの「保険料」と「未来の損得」を徹底解剖
「為替ヘッジ」の選択は、「いくらの保険料を払って、いくらの損失を防ぐか?」という天秤にかける行為です。
まず、その「保険料」の正体である金利差の計算を見てみましょう。
Step 1:ヘッジの「保険料」を知る(金利差の計算)
ヘッジコストの大部分は「2国間の金利差」で決まります。仮に現在の金利が以下の場合…
この年率 約4.9%が、あなたが為替の安定と引き換えに支払う「保険料」の目安となります。
100万円なら、年間約49,000円です。
Step 2:「2つの未来」での損得を天秤にかける
では、年間49,000円の保険料を払う価値はあるのでしょうか?
「円高が進み、為替だけで20万円損する未来」と「為替が変動しない未来」で比較してみましょう。
未来①:予想通り円高になった
ダイレクトに被る
(保険料のみ負担)
未来②:為替が変わらない
(本来あるべき姿)
払い損になる
結論として、為替ヘッジとは
「毎年、数万円のコストを確定させる代わりに、数十万円の大きな為替損失をゼロにする権利を買う」という、まさに保険そのものの選択なのです。
円高による大損がどうしても怖いなら有効ですが、そのためのコストを毎年払い続ける覚悟が必要、と覚えておきましょう。
【2025年最新】為替ヘッジあり投資信託の選択肢
防衛策①で紹介した「為替ヘッジあり」の投資信託は、具体的にどのようなものがあるのでしょうか?
新NISAのつみたて投資枠でも購入可能な、代表的なファンドをいくつか紹介します。
購入前には必ずご自身で目論見書をご確認ください。
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代表例
eMAXIS Slim 先進国株式インデックス(為替ヘッジあり)
業界最低水準の運用コストを目指すeMAXIS Slimシリーズのヘッジあり版。
コストを抑えながら為替リスクを低減したい場合に有力な選択肢です。 -
代表例
<購入・換金手数料なし>ニッセイ外国株式インデックスファンド(為替ヘッジあり)
こちらも低コストで人気のニッセイシリーズ。
eMAXIS Slimと並んで、多くのNISA投資家に選ばれている定番ファンドです。
まとめ:円高は"ノイズ"。動揺しない「心の持ち方」が最強の武器
円高局面での不安を解消するための、具体的な防衛策と心の持ち方を解説しました。
- 仕組みを理解:円高では「円換算の評価額」が減ることを知る。
- 3つの防衛策:「ヘッジ」「分散」「積立継続」から自分に合う戦略を選ぶ。
- 最も大切なこと:短期的な為替変動は"ノイズ"。長期的な視点で積立を続けることが成功の鍵。
為替の動きはプロでも予測困難です。
大切なのは、短期的な値動きに一喜一憂せず、ご自身が決めたルールに従って淡々と投資を続けること。
この「心の持ち方」こそが、凡人会社員が長期投資で成功するための最も確実で、最も強力な戦略なのです。