年金は何歳から受け取る?
65歳・繰上げ・繰下げの正解
「早くもらうと損?」「70歳まで待てば得?」「結局、自分は何歳からがいい?」── 年金の受け取り開始で迷う人向けに、制度・数字・判断基準を8段階でやさしく整理します。
この記事から分かること
- 年金の受け取り開始は原則65歳だが、60〜75歳の範囲で選べること
- 繰上げ受給と繰下げ受給の違い
- 60歳・65歳・70歳・75歳で受け取る場合のざっくり比較
- 早くもらう人・遅らせる人の判断基準
- 読んだあとにやるべき最初の1アクション
結論:迷ったら「65歳開始」を基準に考える
先に結論です。年金の受け取り開始は、まず65歳を基準に考えるのが一番分かりやすいです。 早くもらう繰上げ受給は、毎月の年金額が減ります。遅くもらう繰下げ受給は、毎月の年金額が増えます。 ただし、正解は「一番増える年齢」ではなく、自分の健康・貯金・働き方・家族構成に合う年齢です。 つまり、年金は“得か損か”だけでなく、“いつ生活費が必要か”で決める制度です。
減額される
まず基準にする
増額される
- 本記事は一般的な制度説明です。実際の受給額・税金・社会保険料への影響は、人によって異なります。
- 最終判断の前に、ねんきんネット・公的年金シミュレーター・年金事務所で確認してください。
年金の受け取り開始でつまずく理由
多くの人が迷う理由は、年金の受け取り開始が「年齢を選ぶだけ」に見えて、実際には一生の生活費設計に関わるからです。 しかも、受け取りを早めると減額、遅らせると増額という数字の話だけでなく、退職金・新NISA・iDeCo・働き方・配偶者の年金まで関係します。
-
何歳から?
60歳から65歳になるまでの間に、早く受け取り始める方法です。
-
金額は?
早く受け取る分、年金額は減ります。減額は基本的に生涯続きます。
-
向きやすい人
貯金が少ない、早めに生活費が必要、働く予定が限られる人。
-
何歳から?
66歳から75歳までの間に、遅く受け取り始める方法です。
-
金額は?
遅く受け取る分、年金額は増えます。増額は基本的に生涯続きます。
-
向きやすい人
貯金や収入に余裕があり、長生きリスクに備えたい人。
まず覚えるべき1行
年金は「早くもらうと毎月少なく、遅くもらうと毎月多くなる」制度です。 ただし、損得は寿命・生活費・働き方で変わるため、一律の正解はありません。
ひと目で分かる比較表
まずは、60歳・65歳・70歳・75歳の違いをざっくり押さえましょう。
| 受け取り開始 | 考え方 | 年金額の目安 | 向きやすい人 |
|---|---|---|---|
| 60歳 | 最大級に早くもらう | 大きく減る 昭和37年4月2日以降生まれは最大24%減額 |
すぐ生活費が必要な人 |
| 65歳 | 原則どおり | 基準額 | 迷った人の基本線 |
| 70歳 | 5年遅らせる | 42%増額 | 65〜70歳の生活費を用意できる人 |
| 75歳 | 最長クラスに遅らせる | 84%増額 | 長生きリスクに強く備えたい人 |
- 繰上げの減額率は生年月日により異なります。昭和37年4月2日以降生まれの人は、繰上げた月数×0.4%です。
- 繰下げの増額率は、繰下げた月数×0.7%です。70歳で42%、75歳で84%増額が目安です。
- 上の表は制度理解のための目安です。実際の受給額は、加入期間・給与・家族構成などで変わります。
実際の金額差イメージ:月10万円・15万円・20万円ならどう変わる?
ここでは分かりやすく、65歳で受け取る年金額を月10万円・月15万円・月20万円の3パターンに置いて比較します。 税金・社会保険料を引く前の概算で、実際の手取りとは異なります。
| 65歳時点の年金額 | 60歳開始 24%減 |
65歳開始 基準 |
70歳開始 42%増 |
75歳開始 84%増 |
|---|---|---|---|---|
| 月10万円 年120万円 |
月7.6万円 年91.2万円 |
月10万円 年120万円 |
月14.2万円 年170.4万円 |
月18.4万円 年220.8万円 |
| 月15万円 年180万円 |
月11.4万円 年136.8万円 |
月15万円 年180万円 |
月21.3万円 年255.6万円 |
月27.6万円 年331.2万円 |
| 月20万円 年240万円 |
月15.2万円 年182.4万円 |
月20万円 年240万円 |
月28.4万円 年340.8万円 |
月36.8万円 年441.6万円 |
- 60歳開始は、65歳開始より毎月の金額が小さくなります。たとえば65歳で月15万円の人なら、60歳開始では概算で月11.4万円です。
- 70歳開始は毎月額が大きくなりますが、65〜69歳の5年間は年金を受け取らない前提です。
- 75歳開始は金額だけ見ると大きく見えますが、65〜74歳の10年間をどう生活するかが最大の論点です。
初心者がつまずきやすい5つのポイント
「遅くもらえば絶対得」と思ってしまう
繰下げると毎月の年金額は増えますが、受け取り始めるまでの期間は年金が入りません。そこを貯金や働く収入で埋められるかが重要です。
「早くもらえば安心」とだけ考えてしまう
繰上げると早く現金は入りますが、減額された年金を一生受け取ることになります。長生きした場合の生活費には注意が必要です。
老齢基礎年金と老齢厚生年金を一緒に考えすぎる
繰下げでは、老齢基礎年金と老齢厚生年金を別々に繰下げできる場合があります。片方だけ遅らせる選択肢も検討余地があります。
税金・社会保険料の影響を見落とす
年金額が増えると、所得税・住民税・介護保険料・医療保険料などに影響する場合があります。手取りベースで見ることが大切です。
自分の年金見込額を見ずに判断する
平均額やモデルケースだけで決めるのは危険です。ねんきんネットや公的年金シミュレーターで、自分の見込額を確認しましょう。
迷ったら確認すべき3つ
制度を丸暗記するより、まずこの3つで自分の状況を整理すると判断しやすくなります。
65歳以降の生活費
年金なし期間を貯金・退職金・給与・新NISA取り崩しで埋められるかを確認します。
健康と働く予定
何歳まで働けそうか、働きたいかで繰上げ・繰下げの現実性が変わります。
配偶者・家族の状況
夫婦の年金、遺族年金、扶養、家計全体の収支も含めて判断します。
8段階で理解する【つまずき救済】
自分に合った理解レベルを選ぶと、その段階の解説だけ表示されます。
30秒版(超要点)
年金は原則65歳から受け取れます。60〜64歳で早く受け取ると毎月の年金額は減り、66〜75歳で遅く受け取ると毎月の年金額は増えます。 ただし、繰下げが必ず正解ではありません。65歳以降の生活費をどう用意できるか、何歳まで働くか、健康状態で判断が変わります。 迷ったら、まず65歳開始を基準に、ねんきんネットで自分の見込額を確認しましょう。
はじめて版:蛇口で考えると分かりやすい
年金を「老後に使う水道」だと考えてください。 60歳から蛇口を開けると、早く水は出ます。でも、1か月に出る水の量は少なめになります。 65歳で開けると標準の量。70歳や75歳まで待つと、1か月に出る水の量は多くなります。
ただし、蛇口を開けるまでの間は水が出ません。 だから、繰下げは「待てる人」に向いた選択です。 待っている間の生活費がない人が無理に遅らせると、貯金を大きく減らす可能性があります。
- 繰上げは「早く安心できる」代わりに、毎月の年金額が減ります。
- 繰下げは「毎月多くなる」代わりに、受け取り開始までの生活費が必要です。
小学生でもわかる版:早くもらう・ふつう・遅くもらう
年金には、ざっくり3つのもらい方があります。
- 60〜64歳
早くお金が入るけれど、毎月の金額は少なくなります。
- 注意
少なくなった金額は、基本的にずっと続きます。
- 66〜75歳
待つほど、毎月の金額は多くなります。
- 注意
もらい始めるまでの生活費を準備する必要があります。
中学生版:仕組みは「月数×率」で決まる
繰上げ・繰下げの仕組みは、基本的には「何か月早めたか」「何か月遅らせたか」で決まります。
| 種類 | 計算イメージ | 例 |
|---|---|---|
| 繰上げ | 繰上げた月数 × 0.4%減額 ※昭和37年4月2日以降生まれ |
60歳開始なら最大24%減額 |
| 65歳 | 基準 | 増額も減額もなし |
| 繰下げ | 繰下げた月数 × 0.7%増額 | 70歳開始なら42%増額 |
- 繰上げの減額率は生年月日によって0.4%または0.5%です。
- 繰下げは、増額された年金を基本的に生涯受け取ります。
高校生版:損益分岐はざっくりどう考える?
年金の損得は、毎月の金額だけでは判断できません。 早くもらえば受け取り期間が長くなります。遅くもらえば毎月の金額は増えますが、受け取り開始が遅れます。
たとえば65歳開始と70歳開始を比べると、70歳開始は毎月の年金額が増える一方、65〜69歳の5年間は年金を受け取りません。 そのため、長く生きるほど繰下げが有利になりやすく、早く亡くなると繰上げ・65歳開始の方が累計では多くなりやすいです。
繰下げが有利になりやすい人
長生きに備えたい、65歳以降も収入がある、貯金に余裕がある人です。
65歳開始が無難になりやすい人
生活費に大きな余裕はないが、すぐ繰上げるほど困ってもいない人です。
大学生版:どんな人がどれを選びやすい?
| 選択肢 | 向きやすい人 | 注意点 |
|---|---|---|
| 繰上げ | 生活費がすぐ必要、健康面に不安、働く予定がない | 減額が生涯続く。障害年金など他制度との関係にも注意。 |
| 65歳開始 | 判断に迷う、標準的に受け取りたい、生活設計をシンプルにしたい | 長生きリスクへの備えは別途必要。 |
| 繰下げ | 65歳以降も働く、貯金がある、長生きに備えたい | 待機中の生活費、税金・社会保険料への影響に注意。 |
社会人実務版:判断手順はこの5ステップ
実務では、この順番で確認すると迷いが減ります。
ねんきんネットで65歳時点の見込額を見る
まず自分の基準額を確認します。平均額ではなく、自分の金額で考えます。
65〜75歳の生活費をざっくり書き出す
住居費、食費、医療費、保険料、車、親の介護などを入れます。
年金以外の収入を確認する
給与、退職金、企業年金、iDeCo、新NISA、預金を整理します。
繰上げ・65歳・繰下げを比較する
公的年金シミュレーターで複数パターンを試算します。
不安が残る場合は年金事務所に相談する
配偶者の年金、遺族年金、在職老齢年金などが絡む場合は個別確認が安全です。
専門家版:例外・検証・制度の細部
老齢基礎年金と老齢厚生年金は分けて考える
繰下げでは、老齢基礎年金と老齢厚生年金を別々に繰下げできる場合があります。生活費と税・保険料を見ながら組み合わせを検討します。
繰上げには戻せない注意点がある
繰上げ請求後は、原則として取り消せません。障害年金・寡婦年金・国民年金の任意加入などに影響する場合があります。
- 在職老齢年金、雇用保険、加給年金、振替加算、遺族年金が絡む場合は、一般論だけで判断しないでください。
- 世帯単位の手取り、税金、介護保険料、後期高齢者医療保険料まで含めて確認するのが理想です。
あなたが取るべき行動シナリオ
65歳以降も働ける・貯金があるなら
基本方針
繰下げを候補に入れる。老齢基礎年金だけ、老齢厚生年金だけなど分けて検討する。
理由
待てる人ほど、毎月の年金額を増やして長生きリスクに備えやすいからです。
65歳前から生活費が足りないなら
基本方針
繰上げも選択肢。ただし、減額が続く前提で老後後半の生活費を確認する。
注意点
今だけ助かるで決めると、75歳以降の家計が苦しくなる可能性があります。
よくある質問
Q. 年金は結局、何歳から受け取るのが正解ですか?
一律の正解はありません。迷う人はまず65歳を基準にして、生活費に余裕があれば繰下げ、生活費が足りなければ繰上げも検討する流れが現実的です。
Q. 70歳まで繰下げれば必ず得ですか?
必ず得とは言えません。70歳まで年金を受け取らない期間があるため、その間の生活費が必要です。また、寿命や税金・社会保険料の影響でも結果は変わります。
Q. 繰上げ受給はやめた方がいいですか?
やめた方がいいと断定はできません。貯金が少ない、健康面の不安がある、働けないなどの事情があれば選択肢になります。ただし、減額が続く点は必ず理解しておきましょう。
Q. 老齢基礎年金と老齢厚生年金は別々に繰下げできますか?
別々に繰下げできる場合があります。たとえば老齢厚生年金だけ先に受け取り、老齢基礎年金を繰下げるなどの設計も検討できます。ただし、個別条件があるため公式情報や年金事務所で確認してください。
Q. 最初に何をすればいいですか?
まず、ねんきんネットまたは公的年金シミュレーターで65歳時点の見込額を確認してください。そのうえで、65〜75歳の生活費と照らし合わせるのが最初の一歩です。
まとめ:年金は「増やす」より先に「生活費で困らない」を基準にする
- 年金は原則65歳から。60〜64歳の繰上げ、66〜75歳の繰下げも選べる。
- 繰上げは早く受け取れる代わりに減額、繰下げは遅く受け取る代わりに増額される。
- 正解は人による。健康・貯金・働き方・配偶者・税金・社会保険料まで含めて考える。
- まずやることは、ねんきんネットや公的年金シミュレーターで自分の見込額を確認すること。
参考にした公式情報
- 日本年金機構「老齢年金ガイド」 https://www.nenkin.go.jp/service/pamphlet/kyufu.files/LK03.pdf
- 日本年金機構「ねんきんネット」 https://www.nenkin.go.jp/denshibenri_kojin/n_net/index.html
- 厚生労働省「公的年金シミュレーター使い方ガイド」 https://www.mhlw.go.jp/kouteki_nenkin_simulator_guide/


